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長穴の公差はどこにかかる?15×10±0.1の読み方

長穴の公差「15×10±0.1」の読み方を解説するアイキャッチ図解

皆さんは、図面に「長穴 15×10±0.1」と書かれていて、この±0.1がどちらの寸法にかかるのか迷ったことはありませんか。

結論から書きます。長穴の公差「15×10±0.1」は、JISの記入ルールに当てはめると、直前の数字である短径10だけにかかると読むのが自然です。 長径15には、表題欄に書かれた普通公差が適用されます。ただし、この「長径×短径±公差」という一行の書き方そのものがJISの定める形ではないため、読み手によって解釈が割れます。実際、同じ図面を見た人の意見が「両方にかかる」「短径だけ」「どちらとも言えない」の3つに分かれることも珍しくありません。

だからこそ、最終的な答えは「図面を描いた人に確認する」です。 ただ、確認するにしても、自分なりの根拠を持って質問できるかどうかで、相手の反応も仕事の評価も変わります。

私自身、設計を始めたころに長穴の幅と長さを一行で書いた図面を出し、加工先から「この公差はどちらですか」と電話を受けたことがあります。そのとき自分でもはっきり答えられず、恥ずかしい思いをしました。

この記事では、長穴の公差の読み方をJISの規定までさかのぼって検証し、3つの解釈がなぜ生まれるのかを整理します。さらに、M8ボルトの逃がし穴とピンの案内穴という2つの例で、公差が機能にどう効くかを数字で確かめます。読み終えるころには、長穴の図面を見ても迷わず、描く側に回ったときも誤解されない指示が書けるようになります。

目次

長穴の公差で迷うのは、図面の読み方が未熟だからではありません

「15×10±0.1」の±0.1が両方か10のみかで迷う設計者たち

最初にお伝えしたいのは、この迷いは皆さんの知識不足だけが原因ではないということです。

ベテランでも答えが割れる書き方

「15×10±0.1」という書き方を見せて、周りの設計者や加工者に意見を聞いてみてください。おそらく答えは1つにまとまりません。

  • 「×でつながっているから、15にも10にも±0.1がかかる」
  • 「±0.1は10のすぐ後ろにあるから、10だけにかかる」
  • 「この書き方だけでは決められない。描いた人に聞くしかない」

3つとも、それなりの理屈があります。経験の長い人ほど、自分の職場の慣習を「常識」として話すため、かえって答えがばらつきます。

図面の読み方で迷うのは、図面そのものに迷う余地があるからです。

迷ったまま加工すると何が起きるか

公差の解釈を誤ると、損をするのは加工する側だけではありません。

たとえば長径にも±0.1がかかると解釈した加工者は、長さ方向も慎重に測定し、場合によっては仕上げ加工を1工程追加します。その分、加工時間と費用が増えます。反対に、短径だけと解釈したのに設計者の意図が「両方」だった場合、組立時に位置が合わない部品が出てくるかもしれません。

どちらに転んでも、原因は図面の一行です。この一行をどう読むか、どう書くかを整理しておく価値は十分にあります。

長円の穴の寸法公差が曖昧になる本質|書き方がJISの外にある

長穴の公差をJIS本来の書き方と曖昧な一行表記で比べた図

長穴の公差で解釈が割れる根本の理由は、シンプルです。「15×10±0.1」という形は、JISが定めた長穴の指示方法のどれにも当てはまらないのです。

JISが定める長円の穴の指示方法

機械製図の基本ルールであるJIS B 0001:2019では、長穴を「長円の穴」と呼び、11.7 f)で寸法の記入方法を定めています。規格の要旨は次のとおりです。

  • 穴の機能または加工方法に応じて、記入方法を選ぶ
  • 方法1:長円の穴の「長さ」と「幅」を記入し、両端が円弧であることを「(R)」で示す
  • 方法2:平行な二平面部分の「長さ」と「幅」を記入し、両端は同じく「(R)」で示す
  • 方法3:工具の回転軸線が移動する距離と、工具径を記入する

いずれの方法も、長さと幅を別々の寸法線で記入するのが基本です。寸法線が分かれていれば、公差もそれぞれの寸法に付けるだけなので、どちらにかかるかで迷うことはありません。

公差は「直前の寸法」に付くのが原則

寸法の許容差の書き方は、JIS Z 8318:2013(長さ寸法及び角度寸法の許容限界の指示方法)で決められています。そこでは、許容差は基準となる寸法数値に続けて記入すると定められています。

このルールを「15×10±0.1」にそのまま当てはめると、±0.1のすぐ前にある数値は10です。つまり、規格の文法に従って読めば「10±0.1」がひとかたまりで、15は公差の付いていない寸法になります。これが、冒頭で「短径10だけと読むのが自然」とお伝えした根拠です。

ただし、JIS Z 8318は1つの寸法に1つの公差を付ける場面を前提にしています。「×」で2つの寸法をつないだ場合の扱いまでは書かれていません。規格の外にある書き方である以上、規格を根拠に断定しきることはできないのです。

規格どおりに書かれていない図面は、規格だけでは読み切れません。

長穴の公差「15×10±0.1」を3つの解釈で検証する(独自検証)

解釈A両方・B短径のみ・C断定不可を長円の図で比べた検証図

では、先ほどの3つの解釈を1つずつ検証してみます。どれが正しいかを決めるのではなく、それぞれがどんな前提に立っているかを明らかにするのが目的です。

解釈A「両方にかかる」の前提

この解釈は、「15×10」をひとまとまりの寸法と見ています。板材の寸法を「100×50」と書き、その後ろに共通の注記を付ける感覚に近い読み方です。

しかし、JIS Z 8318の「許容差は寸法数値に続けて書く」という原則とは合いません。もし設計者が本当に両方に±0.1を求めるなら、「15±0.1×10±0.1」と書くか、別々の寸法線で指示するはずです。そのため、根拠としては最も弱い解釈です。

解釈B「短径だけにかかる」の前提

この解釈は、JIS Z 8318の文法をそのまま当てはめています。前の章で説明したとおり、規格の原則に最も近い読み方です。

さらに、機能の面からも裏付けがあります。長穴は多くの場合、ボルトやピンを通して位置を調整するために使います。このとき機能に直接効くのは、相手部品と接する幅のほうです。長さは調整できる範囲を決めるだけなので、多少ばらついても困らない場面がほとんどです。後ほど計算で確かめますが、厳しい公差を付けたくなるのは幅だというのは、設計者の感覚とも一致します。

解釈C「断定できない」の前提

この解釈は、図面の書き方自体が規格の外にあることを重く見ています。社内規格や業界の慣習で、「×の後の公差は両方にかかる」と決めている会社がないとは言い切れません。その場合、解釈Bは外れます。

私の見立てでは、読み方の優先順位はB、次にC、Aは根拠が弱いです。ただし、Bで読んだとしても、発注先から見れば「確認しなかった責任」は残ります。加工前に一言確認すれば済むのであれば、確認するのが最も安全です。

次の表に、3つの解釈を整理します。

解釈±0.1がかかる寸法根拠弱点
A 両方15と10「15×10」をひとまとまりと見るJIS Z 8318の記入原則と合わない
B 短径だけ10のみ許容差は直前の寸法に続けて書く原則「×」表記はJISの想定外
C 断定不可図面の作成者次第書き方が規格の外にある結局は確認が必要

表のとおり、どの解釈にも弱点があります。弱点のない読み方が存在しないこと自体が、この書き方の問題点を示しています。

長穴の寸法指示で解釈が割れる3つの原因

×の多義性・簡略指示の誤用・普通公差の失念という3つの原因

ここからは、なぜこのような書き方が生まれ、読み方が割れるのかを掘り下げます。原因は大きく3つあります。

原因1|「×」がいろいろな意味で使われている

図面の「×」には、複数の役割があります。

  • 穴の数と穴径をつなぐ:「4×φ9」
  • 面取りの寸法と角度をつなぐ:「2×45°」
  • 材料や部品の外形寸法を並べる:「100×50×6」

JIS B 0001でも、同じ寸法のボルト穴が複数あるときは「総数×穴の寸法」と書く方法が定められています。「×」は掛け算の記号ではなく、2つの情報を並べる区切りとして使われているのです。

区切りとして使うのであれば、「15×10±0.1」も「15」と「10±0.1」を並べたものと読めます。一方で、外形寸法の「100×50×6」に慣れている人は、全体をひとまとまりの大きさと受け取ります。同じ記号に慣れ方の違いが重なり、読み方が分かれます。

原因2|2019年のJIS改正で「簡略指示」が加わった(背景)

実は、長穴を一行で書くやり方には、規格上の背景があります。

JIS B 0001は2019年に改正され、長円の穴について4つ目の図例として簡略指示が追加されました。穴から引出線を出し、「SLOT 8×16」のように長穴の寸法を一行で書く方法です(数値は解説資料に載っている例です)。規格では、この簡略指示の解釈は「長さと幅で指示する方法」と同じとされています。

一行で書く形が規格に入ったことで、現場では「長径×短径」をまとめて書く書き方が広がりやすくなりました。CADの穴指示機能で自動的にこうした表記が出るケースもあります。

ここで見落とされがちなのが、改正の解説に書かれた追加の目的です。規格の解説では、この簡略指示は「軽量穴などで特にサイズ公差を必要としない場合」や、記入するスペースが十分に確保できない場合に有用だと説明されています。つまり、一行の簡略指示は、そもそも公差を付けない穴のための書き方なのです。

この事実は、長穴の公差を扱う解説でもほとんど触れられていません。公差を付けたい長穴に、公差を付けない前提の書き方を使ったところに、「15×10±0.1」の混乱の根があると私は考えています。

便利な書き方には、便利に使ってよい範囲があります。

なお、改正を批判的に検証している製図教育の資料もあり、簡略指示の扱いは専門家の間でも議論があります。また、「幅×長さ」と「長さ×幅」のどちらの順で書くかも、手元の資料の例と今回の「15×10」では逆になっています。順番まで含めて統一されていないことも、読み方が割れる一因です。

原因3|普通公差の存在を忘れている

3つ目の原因は、公差が書かれていない寸法の扱いです。

「±0.1が短径だけなら、長径15はどれだけずれてもよいのか」と不安になる方もいます。しかし、公差のない寸法が「何でもよい」わけではありません。JIS B 0001では、公差の指示がない寸法には普通公差を適用し、その規格番号と等級を表題欄の中またはその付近に一括して書くことになっています。

多くの図面では、表題欄の近くに「普通公差 JIS B 0405-m」のような記載があります。これを見落とすと、「15に公差がないのはおかしいから、±0.1は両方にかかっているはずだ」という誤った推論につながります。長径15にも、ちゃんと公差は決まっているのです。

長円の穴の4つの指示方法と普通公差を比較する

長円の穴の4つの指示方法と公差の付けやすさを並べた比較表

ここで、JIS B 0001:2019の長円の穴の指示方法を、公差の付けやすさという観点で比較してみます。

指示方法記入する寸法公差の付けやすさ向いている場面
1 長さと幅+(R)穴全体の長さ、幅各寸法に個別に付けられる穴の外形そのものが機能に効く場合
2 平行部の長さと幅+(R)直線部分の長さ、幅各寸法に個別に付けられる平行な面でガイドする場合
3 工具の移動距離と工具径中心間距離、工具径移動距離に付けやすいエンドミルで加工する前提の場合
4 簡略指示(一行)長さと幅を一行で公差を付けると曖昧になる軽量穴など公差が不要な場合

表から分かるように、公差を付けたいなら方法1〜3のどれかで、寸法線を分けて書くのが確実です。簡略指示は、公差を付けない穴に限って使うのがよいでしょう。

長径15に適用される普通公差

次に、長径15にかかる普通公差を確認します。JIS B 0405:1991の「面取り部分を除く長さ寸法に対する許容差」のうち、6mmを超え30mm以下の区分の値は次のとおりです。

公差等級記号6mmを超え30mm以下の許容差
精級f±0.1
中級m±0.2
粗級c±0.5
極粗級v±1

図面に「JIS B 0405-m」とあれば、長径15の許容範囲は14.8〜15.2mmです。もし普通公差が精級fなら、長径15にも自動的に±0.1がかかります。この場合、解釈AとBのどちらで読んでも結果は同じになり、悩む必要自体がなくなります。迷う前に、まず表題欄の普通公差を確認してください。

長穴の幅と長さ、公差が効くのはどちらか(独自計算)

ボルト逃がしとピン案内で長穴の幅と長さの公差を比べた例

ここからは、長穴の公差が実際の機能にどう効くのかを、数字で確かめます。解釈Bの「幅のほうが大事」という主張が本当かどうかの検証でもあります。

例1|M8ボルトの逃がし穴として使う場合

15×10の長穴にM8ボルトを通し、位置を調整しながら固定する場面を考えます。

まず幅です。JIS B 1001:1985では、M8のボルト穴径は1級8.4mm、2級9mm、3級10mmと定められています。幅10mmは、ちょうど3級(現場合わせなどの粗い組立向け)のボルト穴と同じ大きさです。

次に、ボルトが動ける範囲です。長穴の両端は半径5mmの円弧で、ボルトの半径は4mmです。ボルトの中心は、長穴の端から4mmの位置まで寄ることができます。そのため、ボルト中心が動ける距離は次のようになります。

  • 調整ストローク = 長穴の長さ − ボルト径 = 15 − 8 = 7mm

長さ15に普通公差の中級(±0.2)がかかっても、調整ストロークは6.8〜7.2mmの範囲に収まります。位置調整の余裕が0.2mm増減しても、困る場面はほとんどありません。

幅も同様です。ボルト逃がしが目的なら、幅が10±0.2でも、M8ボルトとのすき間は片側0.9〜1.1mmです。±0.1にしなくても機能上の問題はまず起きません。つまり、ボルトの逃がし穴なら、どちらにも厳しい公差は不要という結論になります。

例2|φ10のピンを案内する溝として使う場合

今度は、長穴にφ10のピンを入れ、ピンが長穴に沿って滑る機構を考えます。ここでは幅の公差が機能を大きく左右します。

ピンの外径をh7で指示したとすると、φ10のh7は上の許容差0、下の許容差−0.015mmです。つまりピンの実際の外径は9.985〜10.000mmになります。

一方、長穴の幅が10±0.1なら、幅は9.9〜10.1mmの範囲で仕上がる可能性があります。幅が9.9mmで仕上がると、10.000mmのピンは入りません。幅が10.1mmなら、すき間は最大0.115mmとなり、ガイドとしてはガタが大きくなります。

長穴の幅ピン外径(φ10h7)すき間結果
9.9mm(下限)10.000mm−0.100mm入らない
10.0mm(中央)9.985〜10.000mm0〜0.015mm入るがきつい
10.1mm(上限)9.985mm0.115mmガタが大きい

この表が示すように、ピンを案内する長穴に「10±0.1」を付けるのは、公差の付け方として適切ではありません。すき間を確保したいなら、「10 +0.1/0」のように片側だけに公差を振るか、はめあい記号で指示するべきです。はめあい公差の考え方ははめあい公差の選び方で詳しく解説しています。

計算から分かること

2つの例を並べると、次のことが言えます。

  • 長さは、どちらの用途でも調整範囲を決めるだけで、厳しい公差が必要な場面は少ない
  • 幅は、用途によって必要な公差がまったく違う
  • 幅に厳しい公差が必要な場合でも、±の対称公差が最適とは限らない

「15×10±0.1」を描いた設計者が、幅に厳しさを求めていた可能性は高いと考えられます。ただし、その±0.1が用途に合っているかどうかは、また別の問題です。公差は「どこにかかるか」と同時に「その値で機能するか」を考えるものです。

長穴の公差で迷ったときの解決方法

読む側は根拠付きで質問し、描く側は寸法線を分ける解決策の図

ここまでの検証を踏まえて、読む側と描く側、それぞれの解決方法をまとめます。

読む側は「根拠つきの質問」で確認する

図面を受け取る立場なら、加工前に必ず確認しましょう。そのとき、ただ「どちらですか」と聞くよりも、自分の解釈と根拠を添えるほうが、相手も答えやすくなります。

たとえば、次のような聞き方です。

長穴の「15×10±0.1」について、±0.1は短径10のみに適用し、長径15は表題欄の普通公差(JIS B 0405-m、±0.2)を適用するという理解でよろしいでしょうか。

この聞き方なら、相手は「はい」か「いいえ」で答えられます。回答はメールなど記録に残る形でもらい、図面の余白にも書き添えておくと、後から揉めることがありません。

図面の公差表記の基本を改めて確認したい方は、公差表記の読み方も参考にしてください。

描く側は「寸法線を分ける」

自分が設計者として長穴を描く立場なら、解決方法はさらに簡単です。公差が必要な長穴は、幅と長さを別々の寸法線で記入してください。

  • 幅:「10 +0.1/0」のように、機能に合わせて公差を個別に付ける
  • 長さ:公差が不要なら数値だけにして、普通公差に任せる
  • 両端:円弧であることを「(R)」で示す

一行の簡略指示は、公差の要らない軽量穴や、スペースがどうしても足りない場合に限って使いましょう。誤解されない図面は、読み手の数だけ正解がある書き方をしない図面です。

長穴の公差を正しく扱うための5つのアクション

長穴の公差を正しく扱う5つのアクションを並べた手順図

最後に、明日から実務で使える具体的な手順を5つにまとめます。

アクション1|表題欄の普通公差を先に見る

長穴に限らず、公差で迷ったら最初に表題欄を確認します。普通公差が精級fであれば、6〜30mmの長さは±0.1なので、解釈の違いが結果に影響しない場合もあります。この確認だけで、悩む時間を大きく減らせます。

アクション2|長穴の用途を確かめる

組立図や相手部品の図面を見て、その長穴に何が入るのかを確認します。ボルトの逃がしなのか、ピンの案内なのかで、公差の重要度が変わるからです。用途が分かれば、「この公差は幅にかかっているはずだ」と筋道を立てて考えられます。

アクション3|合否判定の境目を計算しておく

もし公差の読み方が違ったら、どの寸法で合否が変わるのかを事前に計算します。長径15なら、±0.1と±0.2の差は14.8〜14.9mmと15.1〜15.2mmの範囲です。この範囲に仕上がったときだけ判定が変わる、と分かっていれば、議論のポイントが明確になります。測定値を公差と比べるときの考え方は、公差±0.1で10.13は合格?で解説しています。

アクション4|確認は記録に残す

問い合わせの回答は、口頭で済ませずメールや質疑書で残します。担当者が替わったときや、再発注のときに同じ質問を繰り返さずに済みます。回答の内容は図面の改訂にもつなげてもらいましょう。

アクション5|自分の図面では一行指示に公差を付けない

設計する立場になったら、「長径×短径±公差」という書き方は避けます。公差を付けるなら寸法線を分け、付けないなら簡略指示を使う、というルールを自分の中で決めておけば迷いません。位置決めを長穴で逃がす設計については、位置決めピンの使い分けも参考になります。

この5つを習慣にすれば、長穴の図面で手が止まることはなくなるはずです。

まとめ|長穴の公差は「どこにかかるか」と「何のためか」で読む

ここまでの内容を整理します。

  • 「15×10±0.1」は、JIS Z 8318の「許容差は寸法数値に続けて書く」原則に当てはめると、短径10だけにかかると読むのが自然です
  • ただし、この一行の書き方はJIS B 0001の長円の穴の指示方法そのものではないため、断定はできません。加工前に作成者へ確認するのが最も安全です
  • 2019年のJIS改正で一行の簡略指示が加わりましたが、規格の解説では「特にサイズ公差を必要としない場合」などに有用とされています。公差を付けたい長穴に使うと、解釈が割れる原因になります
  • 長径15には、表題欄の普通公差が適用されます。JIS B 0405の中級mなら±0.2、精級fなら±0.1です
  • M8ボルトの逃がし穴なら、幅も長さも厳しい公差はほぼ不要です。φ10ピンの案内溝なら、幅10±0.1では下限でピンが入らないため、片側公差やはめあい記号で指示するべきです

長穴の公差の読み方は、小さな疑問に見えます。しかし、そこには「規格の文法」「規格の背景」「部品の機能」という、図面を読むうえで欠かせない3つの視点が詰まっています。一行の公差に立ち止まれる人は、図面の向こうにある機能まで見ている人です。

こうした図面の読み書きの力は、独学だけで身につけるには時間がかかります。職場で図面の質問をしづらい、設計者として成長している実感がない、といった悩みを抱えている方は、一度ご自身のキャリアを客観的に見直してみることをおすすめします。

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参考・出典

  • JIS B 0001:2019 機械製図(11.7 f 長円の穴、図172)
  • JIS Z 8318:2013 製品の技術文書情報(TPD)-長さ寸法及び角度寸法の許容限界の指示方法
  • JIS B 0405:1991 普通公差-第1部:個々に公差の指示がない長さ寸法及び角度寸法に対する公差
  • JIS B 1001:1985 ボルト穴径及びざぐり径
  • アートナー「B 0001:2019 機械製図の教育方法の一事例(第4報・第6報)」
  • ラブノーツ「JIS B 0001:2019 変更点まとめ」
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