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VEバリューエンジニアリングとは?機能とコストの考え方

アイキャッチ画像:青い背景に「VEバリューエンジニアリングの基本」のタイトル文字。図面を前に議論する若手とベテランの設計チーム、そして価値の公式をイメージしたグラフィック

「VEって聞いたことはあるけれど、『機能をどうやって数値にするのか』が正直まったく分からない」——皆さん、そう感じたことはありませんか?

VE(バリューエンジニアリング)とは、「価値=機能÷コスト」という式で設計の改善を進める手法です。コストを削減するだけでなく、機能に見合った適正な投資配分を見つけることが本来の目的です。

この記事では、機能の数値化の方法・コスト評価の考え方・FAST法や一対比較法などの実践手順を、現場の経験をもとに具体的に解説します。読み終えるころには「明日から自分の設計にVEを使える」という手応えを持っていただけるはずです。

目次

VEバリューエンジニアリングとは何か——「価値」の式が示すもの

VE(バリューエンジニアリング)の基本公式である「価値(V)=機能(F)÷コスト(C)」をホワイトボードで解説するベテラン設計者と、それを学ぶ若手設計者たちのイラスト

「VEという手法があるとは知っているけれど、実務では一度も使えていない」

そう感じている設計者は、本当に多いと思います。私自身も、設計者としてのキャリアを始めてから数年間はまったく同じ状態でした。VEという言葉は知っていても、実際の設計業務でどう使うのかイメージが持てなかったのです。

VEの基本式は次のとおりです。

V(価値)= F(機能)÷ C(コスト)

これは「製品が持つ価値は、何ができるか(機能)をいくらかかるか(コスト)で割った結果で表せる」という考え方です。

価値を高めるには2つのアプローチがあります。

アプローチ内容
機能を上げるコストは変えずに、より多くの機能・より高い性能を実現する
コストを下げる機能は変えずに、支出を削減する

一番やってはいけないのは「コストだけ下げて機能も落ちる」パターンです。これはコストダウンではなく機能の劣化であり、VEとは呼びません。VEの本質は「同じお金でより良い機能を実現すること」です。

👉なぜ思考で設計を深める

多くの会社でVEが「コストカット活動」として誤解されている現状があります。これがVEが機能しない最大の原因なのですが、詳しくは後ほど説明します。

機械設計者がVEでつまずく本当の理由

設計図面を前にして「抽象的な機能の数値化」に頭を悩ませる若手設計者と、優しく寄り添うベテラン設計者のイラスト

なぜVEは「知っているけど使えない」状態になりやすいのでしょうか。

問題の本質は、「機能」という概念が抽象的に見えてしまうことにあります。

コストは金額という数字で表せます。1,000円、5,000円、100万円——誰でもすぐに理解できます。しかし「機能」を数字にするとはどういうことでしょうか。

たとえば、工場の搬送装置を設計するとします。この装置の機能は「ワークを移動させること」です。では、「ワークを移動させる機能」を1・2・3と数値化するにはどうすればいいでしょうか。

ここで多くの設計者は思考が止まります。「機能に数字をつけるのは主観的じゃないか」「どうやっても恣意的になる」——そう感じるのです。

しかし、機能を数値化できないのは「機能の定義が曖昧だから」であって、定義さえ正しければ数値化は必ずできます。この点を理解すると、VEは一気に使いやすくなります。

VEが機能しない3つの原因

製造コストの削減ばかりに囚われ、製品のライフサイクルコストや本来の機能定義を見失う失敗要因を表現したイラスト

原因①:「機能」の定義があいまいなまま進めている

VEにおける機能の定義には厳密なルールがあります。機能は必ず「動詞+名詞」の形で表現します。

  • ワークを固定する
  • 振動を吸収する
  • 熱を伝える
  • 荷重を支持する
  • 異物を排除する

このように「動詞+名詞」の形に分解すると、機能が明確になります。そして機能が明確になれば、「この機能に対していくらのコストが割り当てられているか」が可視化できます。

「機能はすべて動詞+名詞で表せ」——これがVEの出発点です。

私が若手設計者だったころ、先輩から同じことを教わりました。当時はなぜそうするのか理解できませんでしたが、経験を積むうちに「それが機能を数値化するための前提条件だった」と気づきました。

機能が定義できれば、各機能に対して顧客(社内外問わず)が支払う対価を評価できます。これが「機能の価値」であり、数値化の核心です。たとえば「振動を吸収する」機能に対して、顧客がいくらまでなら支払ってもよいと考えるかを推定することで、その機能の価値が決まります。

原因②:コスト評価の範囲が狭すぎる

VEで扱う「コスト」は、一般的に思い浮かべる「製造コスト」よりも広い概念です。

VEでは「ライフサイクルコスト(LCC)」という考え方を使います。製品が設計されてから廃棄されるまでの全コストを対象にするのです。

コストの種類内容
設計コスト設計・試験・評価にかかる費用
製造コスト材料費・加工費・組立費
物流コスト輸送・梱包にかかる費用
運用コスト使用中のメンテナンス・エネルギー費用
廃棄コスト解体・廃棄処理の費用

たとえば「製造コストを500円下げる設計変更」でも、メンテナンスが難しくなって年間の保守費用が5,000円増えるなら、ライフサイクル全体では確実に損をしています。

私が実際に経験した失敗例を紹介します。ある装置のフレームを軽量化するためにアルミ材を採用したことがありました。製造コストは下がりましたが、使用環境での腐食問題が発生し、メンテナンスコストが大幅に増加してしまったのです。LCCで考えれば明らかな失敗でした。「製造コストだけを見ていると、本当のコストが見えなくなる」——これがVEを運用する上での最重要ポイントです。

原因③:VEを「コストカット活動」と誤解している

多くの会社でVEは「コスト削減のための手法」として導入されます。そのため、プロジェクトの目標が「コストを何パーセント下げる」という数字になりがちです。

しかし本来のVEは、「機能に見合った適正なコスト配分を見つける活動」**です。

コストカットが目的ではなく、「この機能にこのコストをかける価値があるか」を問うことが目的です。

たとえば、ある部品の表面処理に年間100万円かけているとします。その表面処理の機能が「外観を美しくする」だったとして、顧客がその機能に100万円の価値を認めているかどうかを確認するのがVEです。

もし顧客が「外観よりも耐食性を重視している」のであれば、表面処理の仕様を見直して耐食性向上に予算を振り替えることが正しいVE活動です。これは単純なコストカットではなく、価値の最適化です。VEを正しく理解している設計者は、こうした価値の再配分によって顧客満足度を上げながらコストを適正化できます。

設計現場でVEバリューエンジニアリングを機能させる方法

「動詞+名詞」による機能定義シートやFAST法を用いて、設計対象の機能を整理・分解していく設計チームのイラスト

VEを実際に機能させる鍵は「機能定義」から入ることです。

設計対象の機能を「動詞+名詞」で全て列挙することから始めます。これを「機能定義シート」と呼びます。

機能には2種類あります。

機能の種類内容
基本機能(一次機能)製品の本来の目的。なければ製品として成立しない機能
二次機能基本機能を実現するために必要な、補助的な機能

たとえば「ボルト締結部品」であれば、基本機能は「部品を固定する」です。二次機能には「荷重を伝達する」「振動を抑制する」「熱膨張を吸収する」などがあります。

このように機能を分解すると、「基本機能以外の機能に過大なコストをかけていないか」が見えてきます。

次のステップは各機能に対して「コストの配分割合」を計算することです。部品のコストを機能ごとに按分します。100円の部品なら「固定機能に70円、振動抑制に20円、熱対応に10円」という形で機能別コストを算出します。

最後に各機能の「価値」と「コスト」を比較します。価値よりもコストが高い機能は改善の余地があります。逆に、価値よりコストが低い機能は投資を増やせば顧客満足度が上がる可能性があります。

「機能の価値よりコストが高い部分こそ、VE活動で集中的に改善すべきポイントです。」

明日から使えるVEの具体アクション:5ステップ

VEを実際に動かすには、以下の5ステップで進めます。私が現場で実践してきた手順そのものです。

ステップ1:対象の選定と情報収集

まず、どの製品・部品・プロセスを対象にするかを決めます。VEはすべての部品に対して一度に行う必要はありません。コストが高い、または品質問題が多い部分に絞って始めるのが現実的です。

情報収集では以下を揃えます。

  • 部品図面・仕様書
  • 製造コストの内訳(材料費・加工費・組立費)
  • 顧客クレーム・不具合情報
  • 類似品の市場価格

情報が揃うと、「どの機能に問題があるか」の仮説が立てやすくなります。

ステップ2:機能定義(FAST法)

対象部品の機能を「動詞+名詞」で全て洗い出します。この際、「FAST法(Function Analysis System Technique)」を使うと整理しやすくなります。

FAST法では、機能を「なぜ(WHY)」と「どのように(HOW)」の関係で整理します。上位にある機能が「なぜその機能が必要か」を説明し、下位の機能が「どのようにその機能を実現するか」を表します。

たとえば「シャフトを支持する軸受部品」の場合は次のとおりです。

  • WHY(上位目的):「機械精度を維持する」
  • HOW(実現手段):「荷重を受ける」「回転を許容する」「摩擦を低減する」「潤滑油を保持する」

このように機能の上下関係を整理すると、本当に必要な機能とそうでない機能が見えてきます。私自身がFAST法を初めて使ったとき、「こんなに機能があったのか」と驚きました。普段は当たり前に設計していた形状の一つ一つが、実はそれぞれ明確な機能を持っていると気づいたのです。

ステップ3:機能評価と重要度のスコアリング

各機能の「重要度」を数値で評価します。ここが「機能を数値化する」ステップです。

重要度の評価方法には「一対比較法」が一般的に使われます。機能A〜Eがあるとして、AとB・AとC・BとCというように全ての組み合わせで「どちらがより重要か」を評価します。各機能が「勝った」回数の合計が重要度のスコアになります。

機能AとBAとC BとC合計(重要度)
A(荷重を受ける)A勝 A勝2
B(回転を許容する)B負B勝1
C(摩擦を低減する)C負C負0

この評価は主観が入りますが、複数の設計者・営業担当・顧客を交えてグループで行うと客観性が増します。

「一人で決めない」——これがVEの評価を成功させる鉄則です。

ステップ4:コストの機能別配分

各機能に対して、現在のコストがどのように配分されているかを計算します。

部品の総コストを100として、各機能が占める割合を推定します。これは設計者の経験と知識が必要なステップです。「この形状は摩擦低減のためにあるから、加工コストの30%はその機能のためだ」というように、機能とコストを対応させていきます。

数値は完璧でなくて構いません。50%・30%・20%という大まかな按分で十分です。VEは精度よりも「機能ごとのコスト差を可視化すること」に意味があります。

👉材料力学の数値の扱い方

ステップ5:アイデア創出と改善案の評価

重要度のスコアとコスト配分を比較したとき、「重要度が低いのにコストが高い機能」が浮かび上がります。ここが改善の集中ポイントです。

改善アイデアの出し方として有効なのが「機能本位のアプローチ」です。現状の形状・材料・製法に縛られず、「この機能を実現するために他に何か方法はないか」という問いから出発します。

たとえば「部品を固定する」という機能に対しては、次のような代替案が考えられます。

  • 現状:M10ボルト4本
  • 代替案1:接着剤での固定
  • 代替案2:プレス嵌めによる固定
  • 代替案3:スナップフィット構造による固定

この中からコスト・信頼性・組立性などを考慮して最適案を選びます。私が実際に経験したVE活動では、従来の切削加工部品をプレス加工に変更することで、同等の機能を維持しながらコストを40%削減できたケースがありました。現状の加工法を疑わずに設計を続けていたら、気づかなかった改善機会でした。

VEの具体的な計算例:軸受ユニットで手順を追う

軸受(ベアリング)ユニットの機能別コスト配分や重要度スコアのデータをパソコン画面で分析する設計者のイラスト

ここで、VEの手順を具体的な数値で確認します。

ある搬送装置の軸受ユニット(現在のコスト:10,000円)に対してVE分析を行う例です。

① 機能の洗い出し

機能種別
荷重を支持する基本機能
回転を許容する基本機能
摩擦を低減する二次機能
潤滑剤を保持する 二次機能
異物を排除する二次機能

② 一対比較による重要度スコア

全5機能を一対比較した結果は次のとおりです。

  • 荷重を支持する:4点
  • 回転を許容する:3点
  • 摩擦を低減する:2点
  • 潤滑剤を保持する:1点
  • 異物を排除する:0点

③ 現在のコスト配分(設計者の評価による推定)

機能コスト配分金額
荷重を支持する 40%4,000円
回転を許容する30%3,000円
摩擦を低減する 15%1,500円
潤滑剤を保持する10%1,000円
異物を排除する5%500円

④ 価値分析

重要度0点の「異物を排除する」機能に、500円のコストが割り当てられています。使用環境が清浄で異物混入リスクが低い場合、シールの仕様を見直すことでコスト削減できる可能性があります。

このように数値を使って「どこに改善余地があるか」を可視化するのがVEの手法です。改善効果の大きさは、重要度とコスト配分の乖離が大きい機能ほど高くなります。

VEとVA・IEの違い:3つの手法を整理する

設計段階のVE、量産段階のVA、製造工程のIEという3つの手法の違いを、3つのセクションに分かれたタイムラインで表したイラスト

VEを学ぶと、似た手法として「VA(バリューアナリシス)」「IE(インダストリアルエンジニアリング)」という言葉を目にします。それぞれの違いを整理しておきます。

手法対象フェーズ主な目的
VE(バリューエンジニアリング)設計・開発段階機能とコストのバランス最適化
VA(バリューアナリシス) 量産・調達段階既存製品・購買品のコスト改善
IE(インダストリアルエンジニアリング)製造工程作業効率と生産性の向上

機械設計者にとって最も関わりが深いのはVEとVAです。VEは設計段階で使い、VAは量産後の改善活動で使います。

設計段階でVEをしっかり行うことで、後からのVA活動で行える改善の幅が大きく広がります。一般的に「製品コストの80%は設計段階で決まる」と言われており、VEは費用対効果の最も高いコスト改善活動です。設計段階の1円削減は、量産後の10円削減よりも難易度が低いのです。

技術営業職がVEを武器にする方法

VEの思考(機能ベースの代替案)を武器に、クライアントへ価値向上と適正コストの提案を行い信頼を得ている技術営業のイラスト

技術営業として顧客に提案する立場にある方にとっても、VEの知識は非常に有効です。

顧客が「コストを下げたい」と言うとき、その裏には「機能は落としたくない」という本音があります。VEの思考を使えば、「同等の機能をより安く実現する代替案」を提案できます。これは単価交渉とは全く異なる、付加価値のある提案です。

たとえば「現在の部品を板金加工から鋳物に変更することで、コストを30%削減しながら耐久性を維持できます」という提案は、VEの視点から生まれるものです。

技術営業がVEを理解していると、顧客との会話が「値段の話」から「価値の話」に変わります。「あなたに話を聞くと、いつも面白い提案が来る」と顧客に思われる営業こそ、VEを武器にしている人です。

また、自社製品の機能を「動詞+名詞」で説明できるようになると、顧客への説明も格段に分かりやすくなります。「この製品は〇〇を××できます」という機能ベースの説明は、スペック数値の羅列よりも顧客の理解を促します。

👉設計の不安を克服する方法

まとめ:VEバリューエンジニアリングは「価値を上げる」設計思考

VEを一言で言えば「機能とコストのバランスを最適化する設計思考」です。コストカットの手法ではありません。

VEが機能しない3つの原因と、その対処法を振り返ります。

  • 機能の定義があいまい → 「動詞+名詞」で定義する
  • コスト評価の範囲が狭い → ライフサイクルコスト(LCC)で考える
  • コストカット活動と誤解している → 価値の最適化だと認識する

この3点を意識するだけで、VEの実務活用が大きく変わります。

VEは難しい手法ではありません。ただし「機能って何だろう」という本質的な問いに向き合うことを求められます。それが設計者としての思考力を鍛え、「なぜこの形にするのか」を語れる設計者への成長につながります。

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